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障がい者雇用で業務をどう切り出す?任せる仕事の選び方
【更新日】2026.07.09

障がい者雇用を進めるとき、自社では『採用した後に任せる仕事』まで具体的に決まっているでしょうか。
障がい者雇用に取り組む必要性を感じていても、受け入れる部署、任せる業務、教える人が決まらず、検討が長引く企業は少なくありません。
障がい者雇用の業務の切り出しは、空いている作業を渡すだけではうまく進みません。大切なのは、障がい特性、本人の得意不得意、作業環境、指示の出し方を合わせて考えることです。同じ障がい名でも、合う仕事や必要な配慮は人によって変わります。
この記事では、身体障がい・知的障がい・精神障がい・発達障がいの特性を大まかに押さえながら、企業が業務を選ぶときの考え方をまとめます。
障がい者雇用で最初に悩みやすいのは「任せる仕事」

最初に悩むのは「任せる仕事」
障がい者雇用を始めるとき、多くの企業が最初に向き合うのは「採用した後に何を任せるか」という問題です。求人票を作る前に、業務内容、勤務時間、作業場所、指導担当者を決める必要があります。ここが曖昧なままだと、採用後に本人も現場も戸惑います。障がい者雇用の業務の切り出しは、採用活動と同時に進める重要な準備です。
空いている作業を渡すだけでは続かない
「人手が足りていない作業を任せる」「誰でもできそうな作業を集める」という決め方だけでは、継続に課題が出る場合があります。作業量が日によって大きく変わる、指示する人が毎回変わる、急な対応が多い業務では、本人の負担も現場の負担も増えます。作業の難易度だけでなく、手順、量、ペース、教え方まで含めて業務を組み立てる必要があります。
「続けられる業務」を設計する視点
障がい者雇用で大切なのは、短期間だけ任せられる仕事を探すことではありません。本人が役割を持ち、現場も無理なく支えられる形を作ることです。作業の範囲を決める、手順を文書や写真で示す、相談先を決める、困ったときの対応を共有する。こうした準備が、働き始めた後のミスマッチを減らす土台になります。
障がい特性に合った仕事は、一人ひとりの状態から考える

障がいの種類で配慮の方向性は変わる
身体障がい、知的障がい、精神障がい、発達障がいでは、職場で必要となる配慮の方向性が異なります。移動や姿勢への配慮が必要な方もいれば、手順の明確化、体調面への配慮、感覚刺激への配慮が必要な方もいます。障がいの種類を知ることは、業務を考える入口になります。ただし、それだけで仕事を決めることは避けたいところです。
同じ障がい名でも得意不得意は異なる
同じ障がい名でも、得意な作業、苦手な作業、疲れの出方、コミュニケーションの取り方は一人ひとり違います。たとえば、発達障がいのある方の中にも、細かなチェック作業に集中できる方もいれば、音や光の刺激で疲れが出る方もいます。障がい名ではなく、本人がどのような環境で力を発揮できるのかを把握することが大切です。
本人との対話と支援機関の情報を活用する
業務を決める際は、企業側だけで判断しないことも重要です。本人の希望、これまでの経験、配慮してほしい点、避けたい作業を聞くことで、業務設計の精度が上がります。必要に応じて、就労支援機関や関係機関の意見を取り入れる方法もあります。
本人、企業、支援側で同じ情報を持つことで、「思っていた作業と違う」「必要な配慮が伝わっていない」といった採用後のすれ違いを減らせます。
身体障がいのある方には、作業環境も含めて業務を決める

身体状況と作業環境を合わせる
身体障がいには、肢体不自由、視覚障がい、聴覚障がい、内部障がいなど、さまざまな状態があります。任せる業務を考えるときは、作業そのものだけでなく、通路の幅、作業台の高さ、席までの移動、道具の位置、休憩の取り方も関係します。
たとえば、データ入力であれば座った姿勢を保てる机や椅子を用意する、書類ファイリングであれば棚の高さや書類の置き場所を調整する、検品や軽作業であれば作業台の高さや道具の配置を本人に合わせるなど、作業環境によって担当できる範囲が変わります。
業務内容以外の負担にも目を向ける
作業内容が本人に合っていても、移動距離が長い、立ち作業が続く、休憩場所まで遠い、通院への配慮がない場合は、勤務を続ける負担が大きくなります。
内部障がいのある方では、外から状態が分からないこともあります。体調、通院、疲労への配慮を本人とすり合わせ、勤務時間や作業量を調整することが必要です。
できないことだけで判断しない
身体障がいがあると聞くと、企業側は先に制限を思い浮かべることがあります。しかし、作業場所、道具、動線、担当する工程を変えることで、できる作業が見つかる場合があります。
たとえば、準備や運搬は社員が行い、本人は座ったままできる確認作業を担当する、といった分け方です。重要なのは、できない理由を並べることではなく、どの条件なら担えるのかを具体的に探ることです。
重要なのは、できない理由を並べることではなく、どの条件なら担えるのかを具体的に探ることです。通路の幅、作業台の高さ、道具の置き場所、休憩の取り方を本人に合わせることで、担当できる作業の範囲を広げられる場合があります。
知的障がいのある方には、手順が分かる業務から始める

手順が決まった作業から始める
知的障がいのある方には、作業手順が明確で、同じ流れで繰り返せる業務が合う場合があります。たとえば、備品の補充、清掃、書類の並べ替え、決まった場所への物品配置などは、手順を示しながら担当範囲を決められる作業です。
作業の目的、順番、完成形を示すことで、本人が自分の担当内容を理解できます。まずは一つの工程から始め、慣れ方を見ながら次の工程を追加していきます。
口頭説明だけに頼らない
作業を伝えるときは、口頭説明だけで終わらせない工夫が必要です。写真付きの手順書、完成見本、色分けされた道具、チェックリストを用意すると、作業中に迷ったときの手がかりになります。「ここまでできたら完了」と分かる基準も欠かせません。
教える人によって説明が変わらないように、作業手順、使う言葉、完成の基準を現場内で共有しておくことも大切です。
速さだけで評価しない
作業量やスピードだけを基準にすると、本人の強みが伝わらない場合があります。丁寧に作業できること、同じ手順を継続できること、決められた流れを守れることも、仕事を任せるうえで大切にしたい要素です。
最初は作業量を少なめに設定し、慣れ方をたしかめながら調整します。本人ができた作業をその場で伝え、「次は同じ手順で5個増やしてみましょう」「明日は同じ作業を最初から最後まで担当してみましょう」と、次に任せる内容を具体的に示します。
精神障がいのある方には、体調の波を前提に業務を組み立てる

体調の波を前提に勤務を組み立てる
精神障がいのある方は、体調の波、緊張、疲労、対人場面の負担が仕事に影響する場合があります。業務内容だけでなく、勤務時間、休憩の取り方、不調時の連絡方法をあらかじめ決めておくことが重要です。
体調が少し悪いときや疲れが強いときに、誰へ、どのタイミングで伝えるのかを決めておくと、本人だけで抱え込まずに済みます。職場側も状況を早めに把握できるため、作業量を減らす、休憩を入れる、担当業務を一時的に調整するなどの対応を考えられます。
作業上の質問だけでなく、体調の変化、疲労、対人面の負担も伝えられる流れを作っておくと、人事や総務も含めて状況を共有できます。本人任せ現場任せにせず、勤務調整が必要なときの動きまで決めておくことが大切です。
変化の少ない作業から役割を作る
精神障がいのある方に任せる業務では、急な変更や対人対応が多い作業よりも、手順が決まっていて、一人で集中できる作業から検討します。データ入力、書類ファイリング、在庫数の記録、定期的なチェック業務など、一定の流れで進む業務から担当範囲を考えます。慣れてきた後も、急に担当範囲を広げず、本人と相談しながら進めることが大切です。
発達障がいのある方には、指示と担当範囲を具体的に伝える

強みと困りごとの両方を把握する
発達障がいのある方は、集中力、細部への注意、記憶力、ルールへの忠実さなどが業務で力になる場合があります。反対に、内容がはっきりしない指示、急な予定変更、感覚刺激、複数業務の同時進行で負担が出る方もいます。職場側は、強みだけに期待するのではなく、どの場面で困りごとが出るのかも把握し、指示の出し方や担当範囲を決める必要があります。
指示は具体的な形で伝える
「なるべく早く」「きれいに」「適当に進めて」などの曖昧な指示は、受け取り方に差が出ます。作業のゴール、手順、優先順位、期限、報告のタイミングを具体的に伝えることが大切です。たとえば、「Aの商品を10個ずつ袋に入れ、終わったら担当者に声をかける」と伝えると、作業の終点が明確になります。また、現場側がメモや手順書を用意しておくと、本人が作業中に迷ったときに確認できます。担当者に毎回聞かなくても、次の動きが分かる状態を作れます。
ルーティン化できる作業を活かす
細かなチェック、分類、入力、在庫管理、ラベル貼り、検品などは、手順を決めて運用できます。本人の得意分野と作業内容が合えば、毎日または決まった曜日に担当する業務として設定できます。
ただし、得意に見える作業でも、音、光、におい、人の出入りなどで疲れが出ることがあります。作業場所は人の出入りが少ない場所にする、休憩を早めに入れる、長時間同じ作業を続けないなど、本人の負担を減らす工夫もあわせて考える必要があります。
障がい者雇用で任せる仕事は、工程ごとに分けて考える

大きな業務を工程ごとに分ける
障がい者雇用でどんな仕事を任せるかを決めるときは、今ある業務を大きなまとまりのまま扱わず、工程ごとに分けて考えることが大切です。たとえば「発送業務」には、商品準備、数量チェック、封入、宛名ラベル貼り、梱包、発送前チェック、片付けがあります。工程を分けると、本人が担当する作業と、社員が最終判断する作業を分けることができます。
作業を分けると現場の負担も把握できる
業務を細かく分けると、どこに時間がかかっているのか、どの工程なら任せられるのかが分かります。現場担当者が抱えている雑務や後回しになっている作業も、切り出しの候補になります。
ただし、これまで社員が担当していた業務を、そのまま本人に渡すと、手順の多さや判断の場面が負担になる場合があります。社員がこれまで通り担当する工程と、本人に任せる工程を分けて考えることで、現場の負担を減らしながら担当範囲を決められます。
最終チェックを誰が担うかを決める
作業を切り出すときは、本人が担当する工程だけでなく、最終チェックを誰が担うのかも決めておく必要があります。たとえば、数量やラベルの向きは本人が作業中に確認し、納品前の最終判断は社員が行うなど、誰がどこまで確認するのかを決めておきます。責任の範囲が曖昧なままだと、ミスが起きたときに本人も現場も困ります。作業内容と確認体制を合わせて決めることが重要です。
業務を任せる前に決めたい担当範囲・完了基準・相談先

作業名だけでなく、担当範囲まで決める
障がい者雇用で任せる業務を考えるときは、作業名だけを決めても十分ではありません。たとえば「検品を任せる」と決めても、どこからどこまでを担当するのかが決まっていないと、本人も現場も判断に迷います。 準備、作業、チェック、片付け、報告のうち、本人が担う工程と社員が担う工程を分けておくことが大切です。
完了基準は行動で分かる形にする
完了基準も事前に決めておきたいポイントです。「きれいにする」「間違えないようにする」といった言葉だけでは、人によって受け取り方が変わります。「10個ずつ袋に入れる」「ラベルの向きをそろえる」「終わった箱は右側の棚に置く」など、数や置き場所、仕上がりで判断できる基準にします。 完成見本や写真があると、作業中に状態を比べられます。
困ったときの相談の流れを決める
作業中に分からないことが出たとき、誰に声をかけるのかも決めておきます。担当者が不在のときに誰が代わりに対応するのか、ミスがあったときに本人がどこまで対応し、どこから社員に引き継ぐのかも決めておくと、本人だけに判断を任せる場面を減らせます。相談の流れが決まっていると、担当者が変わっても、同じ手順で対応できます。
業務の切り出しは役割づくりまで含めて考える
業務の切り出しでは、作業を細かく分けた後に、実際の運用まで決めておくことが大切です。誰が作業を始めるのか、どこで完了とするのか、分からないことが出たときに誰へ声をかけるのかまで決めておくと、採用後に現場で判断に迷う場面を減らせます。
業務を選ぶときは、採用後に続けられるかまで考える

作業量が安定しているかを考える
障がい者雇用では、採用した後に継続して任せられる業務があるかが大切です。月に数回しか発生しない作業や、繁忙期だけ急に増える作業では、本人の役割が安定しません。毎日または毎週一定量がある作業、時期によって量を調整できる作業、複数の工程を組み合わせられる作業を候補にすると、雇用後の流れを作れます。
指示を出す人を決める
業務が合っていても、指示を出す人が毎回変わると、本人が混乱する場合があります。作業の開始、途中の質問、完了報告、トラブル時の対応について、誰が担当するのかを決めておく必要があります。担当者が不在のときの代わりも決めておくと、現場が止まりません。人事・総務と現場担当者の役割分担も必要です。
ミスマッチは早めに調整する
本人に合わない業務を任せ続けると、体調不良、欠勤、意欲の低下、現場の負担につながる場合があります。作業の量、手順、環境、人間関係に課題が出たら、早い段階で調整します。本人の努力だけに任せず、業務内容や支援体制を変える視点が必要です。採用後も、作業量を減らす、手順を伝え直す、作業場所を変える、相談のタイミングを増やすなど、働きながら調整していくことが大切です。
社内業務だけで任せる仕事を作るのが難しい場合
社内に安定した作業が見つからないこともある
企業によっては、既存業務の中から安定した作業を切り出すことが難しい場合があります。日々の業務が専門的で分けにくい、部署ごとの繁閑差が大きい、短時間で任せられる作業が少ないなど、理由はさまざまです。担当部署が決まらないまま採用だけを進めると、入社後に本人が何を担当するのか分からない状態になります。
現場に教える時間がない場合もある
現場が忙しい職場では、作業を教える時間、質問に答える時間、手順書を作る時間を確保できないことがあります。受け入れへの気持ちがあっても、日常業務に追われて準備が進まないケースもあります。障がい者雇用では、採用前の準備がその後の働き方に影響します。現場だけで抱え込まず、外部の支援を取り入れる選択もあります。
無理な業務づくりは本人にも現場にも負担になる
業務を作らなければならないという焦りから、十分に設計されていない仕事を任せると、本人も現場も困ります。作業量が足りない、教える人が決まらない、成果物の基準が曖昧な状態では、雇用の継続に負担がかかります。社内だけで業務を作ることが難しい場合は、業務設計そのものを外部と一緒に進める方法もあります。
業務設計に悩む企業には、軽作業モデルという選択肢もある

軽作業モデルは、任せる業務を作るための考え方
軽作業モデルとは、検品、封入、梱包、仕分け、ラベル貼り、内職作業など、手順を決めて進められる作業を、障がい者雇用の業務として用意する考え方です。社内の専門業務を無理に分けて任せるのではなく、手順を決めて進められる軽作業を、障がいのある方に任せる仕事として用意します。
軽作業は工程を分けて担当範囲を決められる
軽作業は、準備、作業、確認、仕上げ、片付けなどの工程に分けて考えられます。たとえば、検品であれば「数を数える」「汚れや破損を確認する」「完了したものを指定の場所に置く」といった流れに分けられます。工程を分けることで、本人が担当する範囲、社員が確認する範囲、完了の基準を決めて運用できます。
何を任せるかで迷う段階から支援を受けられる
障がい者雇用では、採用方法だけでなく、業務設計、作業手順、現場の受け入れ、定着支援まで考える必要があります。軽作業モデルを活用すると、「どんな仕事を任せるか」で止まっている段階から、作業内容の設計を進められます。このモデルは、企業が作業内容、手順、担当範囲を一から決めるのではなく、あらかじめ設計された軽作業の流れを活用しながら雇用を始める方法です。
まとめ:障がい特性に合った業務づくりは、続けられる設計から

障がい者雇用で任せる仕事を決めるときは、障がい名だけで判断するのではなく、本人の状態、得意不得意、働く環境、現場の受け入れ体制を合わせて考えることが大切です。
任せる仕事を決めた後も、実際に働き始めてからの様子をもとに、作業量や伝え方を少しずつ調整していくことが大切です。
ただ、社内の既存業務だけで役割を作ることに限界を感じる企業もあります。その場合は、検品・封入・梱包・仕分けなどの軽作業モデルを活用し、作業の流れや担当範囲を組み立てる方法もあります。
障がい者雇用を企業だけで抱え込む必要はありません。外部サポートも取り入れながら、働く人と企業の双方に無理の少ない形を探していくことが、長く続く雇用づくりにつながります。


